日常力 大災害と日本骨髄バンク
日本骨髄バンクの執行本部_理事会と業務執行会議 
  骨髄バンクの‘ほうれんそう’―報告と連絡と相談

 骨髄バンク事業は、ドナーさんから安全に幹細胞をいただいて確実に患者さんに届ける「医療に直結したあっせん業」です。そのため、移植医療現場(移植を行う病院、骨髄や末梢血幹細胞を採取する病院)、ドナー登録の協力を請け負う日本赤十字社等との連携が日常的業務であり、日本各地にはドナーコーディネートの取りまとめポイントである地区事務局を置いています。このような広大なエリア対象の事業には、時に「どう進めるか」を単独で判断できない案件が発生します。また巨大な船の航行と似ていて、進路を簡単に変えることはできません。多人数、多組織連携で何事かを行うには、各自と各部門と統括部とがそれぞれ進めていることを伝え合い、意思疎通を図り、決定を速やかにフィードバックする工夫が必須です。世にいう、ほうれんそう・報告と連絡と相談です。

 骨髄バンクが発足してから28年が経過しました。この年月をかけてこの連絡経路は、必要に応じて確実に構築されてきました。そうして徐々に組織体として安定してきた、と言っても良いかもしれません。

 この度の本稿執筆のためにインタビューを進めてみて、あらためて私は、東日本大震災が発生して日本中が大混乱だった中、骨髄バンク事業に大きな支障が無かったのも、この「日常的に粛々と仕事を進める態勢」つまり‘日常力’が構築されてきていたからだと感じました。

 ここでは年間企画のもとで進められる主な業務の執行部門を構成している理事会と業務執行会議はどのように運営されているか、またその理事会に直結して執行そのものを進める中央事務局についてお話しします。事務局が作成する会議資料や会議開催の手配仕事などを述べることで、骨髄バンク事業の理念を支えるのもまた人の手である、と感じていただけましたら幸いです。

理事会

 骨髄バンクの業務を進めるための最高責任者は、理事長です。ただ、どのような公的機関であっても私企業であっても、必ず最高責任者には複数の補佐役がいるように、日本骨髄バンクにも副理事長が2人、理事が7人(2019年2月現在)、監事が2名いて理事長を支えています。私も理事の1人として9年前から参加してきました。

業務執行会議

 骨髄バンクには、年に2回開催される通常理事会、通常理事会が無い月(年9回ほど)に業務執行会議があります。結局、通常理事会と業務執行会議とで、理事はほぼ毎月理事長の元に集合して運営に参考意見を述べていることになります。業務執行会議では、協議事項や報告事項などの案件が10件前後出されます。併せて非公開部(協議に人名や施設名などが出ざるを得ない段階の案件)で数件の協議事項があります。それぞれの案件では、ほぼ全ての議事の文章のほかに関連する資料が付いています。これらの議事と資料が「席上資料」として印刷されて、出席の連絡をしておいた理事が着席前に会議テーブルの名札と共に置かれています。またこれらの資料は、非公開部分は別として、必ず事前に各理事に郵送されてきますので、理事はこれを読み込んでおいて出席し、より良い業務執行のための参考にしてもらうよう意見を述べます。

会議資料と議事録

 会議資料が毎回かなりの量に上ることは、つまりそれだけ骨髄バンク事業は日々膨大な仕事量をこなしているといえます。骨髄バンク事業を無理やり一言にまとめれば、「ドナーさんの骨髄を病に苦しんでいる患者さんに的確に届けて、結果的に救命に協力する事」ですが、それはまた、「骨髄バンクは造血細胞移植医療の現場と、ドナーさんが暮らす日本(時には海外)の市民生活とを結ぶ立場にある」ということです。医療現場で骨髄バンクと連携する立場には移植医療にあたるお医者さんや看護師さんや院内コーディネーター(HCTC)さん達がいますが、ドナーさんと骨髄バンクを「結ぶ人達」がドナーコーディネート部(とコーディネーターさん達)であり、移植現場と骨髄バンクを「結ぶ人達」が移植調整部です。

 ですから、骨髄バンクを主に4本の柱によって支えられている建造物とすれば、ドナーコーディネート部と移植調整部が2本の柱で、ドナー募集や募金活動のための表の顔を受け持つ広報渉外部がもう1本、ほかの3部門の柱が緩みなく立っていられるようがっちり支えているのが総務部、といえます。ほかに移植調整部には国際担当職員がいて、東京にある中央事務局には関東地区事務局も併設されています。この組織体による仕事の対象は日本と世界全体と表現しても過言ではありません。

 つまり会議の案件(資料)は、骨髄バンクが広大な対象との連関で進められる事業の折々に発生する、各部門の担当者だけでは判断できない(時には、してはならない)諸事項そのもの、ということになります。これらが会議項目として文字化されて、業務執行会議や理事会での席上資料となります。

 ただし理事会や業務執行会議、ほかの各種委員会や評議員会もすべて、席上での発言は「生」であって、そのまま発言が会議外へ公開されることはありません。これもまた、どのような企業体であっても公的機関であっても、会議録は発言者の校閲を経て初めて「確かにこのように発言しました」として残されているはずです。そうじゃないなら、自由に思考錯誤しながら誰か・何かへの遠慮をせずに発言する、という参加姿勢が削がれることになりかねません。具体的には、交わされた意見は音声収録されて文字化、議事録(案)となり、発言者の元へ校閲依頼が送られてきます。これを発言者は「この言い方だと、誤解されて誰かの迷惑になってはいけないからこの部分は削ろう」「もう少し整理しないと真意が伝わらないかな」などと校閲(削除・修正)して返送することで、「私の発言を校閲しましたので、どうぞ公表してください」という意思表示をします。これで正式な記録となります。

 以上の会議(報告と相談)の運営のための事務的バックアップもまた、骨髄バンク事務局の担当です。

日本中に広がる‘骨髄バンクの協力体制’

 もちろん日本骨髄バンクにはたくさんの方々が参加する協力体制が確立しています。 高所・大所からの意見を伺うために、必要に応じて開催される評議委員会や各種諮問委員会があります。そして事業推進を各地・各場面で協力する方々として約100人の地区普及広報委員さんやドナー登録そのものを支える約1,100人の地区説明員さん等の協力者がいてくれます。

 移植医療と骨髄バンクを医療の側で結ぶ立場として欠かせない「調整医師」は1,000人を超えます。そして多くの移植病院にはHCTC(造血細胞移植コーディネーター)がいてくださって、患者さんのために骨髄バンクからの移植にも対応します。

 ここでは骨髄バンクの中枢にある執行会議(理事会)に焦点をあてましたが、骨髄バンクは広大なネットワークのいずれも‘支え手’として欠かせない多くの環によって形作られている、ということを感謝しつつ付記しておきます。

 公益財団法人日本骨髄バンクのホームページにも入ってみてください。もしあなたが若くて健康な方でしたら、ドナー登録を考えていただけましたら、本当に嬉しいです。
 https://www.jmdp.or.jp/